赤ちゃん縁組のその「実費」って妥当なの?
千葉で特別養子縁組に関するとても悲しい事件があり、そして論点のズレた報道を見ていて悲しかったところに、こまさんが早速記事を書いていて、こまさんもフローレンスも流石だなあと思いました。
Yahoo!ニュースで記事を公開しました。
— 駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) 2016年9月30日
千葉県の違法特別養子縁組事件についての解説と声明(駒崎弘樹)- Yahoo!ニュースhttps://t.co/Bp98QzJKHK
「現金受け取り」が不当でないのは、まさに。誤った報道の多いニュースで胸を痛めてました。読んでほしい。 https://t.co/KVwbfvzvLD
— Sachi IRITANI (@sachiiritani) 2016年9月30日
そうしたら、こんな反応がありました。
@sachiiritani @Hiroki_Komazaki 現金受け取りは違法ではないのは理解できました。しかし、この養親が支払ったトータル225万円は妥当なのかはよくわからなかったです。養子縁組ってこんなに高んだ!というのが正直な感想です。
— kameko (@akkameko) 2016年9月30日
正直わかる…。
私も最初特別養子縁組にかかるお金が巨額で当初のけぞったのを覚えています。
まず前提として、この千葉県で起きた特別養子縁組あっせん事業者の不当に関する事件においては、事業者が養親希望者に対して、「100万円を先払いすると優先順位が2番目になるよ」と言っていて、「お金を払うから優先順位を上げる」という事実が不当である。だから、「この案件に関してトータル225万円は妥当かどうか?」という問いだけでいうと、妥当ではないです!
でも、実費として200万円程度かかることもあるだろうな、と思います。
実親は10代など出産・子育てが困難で支援が必要なケースが多いです。経済的に困難な方がとても多いので出産費用、妊婦健診費の負担が必要です。(リスク出産の場合はさらに高額に…)(経済的事情により、健康保険に加入していないケースの場合はまるっと負担が必要になるんだろうなあ…)
そして、出産まで約10か月の生活支援費が必要な場合が多くあります。その実親の親や相手の男性が不在のケースが多くて、そもそもまともな家がなくて生活できない方もいるだろうし、妊娠生活にかかるまっとうな知識を得る機会もない方が多いので、無事の出産に至るまでの精神的・身体的ケアがいるだろうと思います。
ちなみに実親が生活するための母子寮を持っているあっせん事業者さんもあります。(母子寮て…家賃やら食費やら高熱費やらで、固定費どんだけかかるの…。)でも、寮が必要なほど生活支援が求められているということですよね。
さらに養子縁組実施の家庭裁判所での裁判手続き(結構時間かかるし弁護士料もいるだろうし)のサポートや、養親の選定・研修費用も必要です。その養親さんがちゃんと育てていける家庭なのかどうか判定するために、何度か家庭訪問もされるでしょうし…(そしたら交通費ばかにならないだろうな…)、さらに裁判後も養育報告を受け付けたり…と考えると、最低でも170〜180万くらいないと継続的に運営できないだろうなあと感じています。
私は、特別養子縁組に詳しいわけではないですが、「実親」にあたりそうな女性をたくさん見てきました。彼女たちの相談に乗ること一つとっても、とても大変だったりします。
以前、こんなことがありました。児童養護施設出身だったあるMちゃんという17歳の子が妊娠したときのことです。Mちゃんには両親がいません。相手の男性は妊娠の知らせを聞くと連絡がとれなくなってしまったそうです。その日、MちゃんからLINEをもらって、「とりあえず病院に行こう」という話になりました。一番近くのレディースクリニックが電車で2駅先。でもMちゃんは、電車に乗ったことがなかった。(こういうケースは施設出身者でなくても結構多いです)だから、切符の買い方の説明からスタートするんです。
10代の妊娠の場合、その子の親も相手の男性もいない場合、経済的な支援がない場合。その子が、やむをえず中絶したり、中絶という選択肢も知らず産み落としてしまうことを防ぐことができるのが「特別養子縁組」です。だからこそ、実親支援ひとつとってもものすごい労力と時間と資金が必要です。私は、切符の買い方から始まり、最後レディースクリニックに送り届けるまでに1時間半かかりました。
想像していただけたら、きっと、その金額の大きさを理解してもらえると思っています。
でも、福祉的な意味が強いからこそ、その実費についても国からの支援があったらいいな、とも思います。そして実費の基準に関しても現在は事業者によってバラバラ…。特別養子縁組については、「制度が不在」であるそうです。こまさんの声明を引用します。
こうしたことが起きる背景には、「制度の不在」があります。
特別養子縁組の仲介と言うのは、児童福祉に関する高い専門性と倫理意識が求められます。しかし、現在は、第二種福祉事業と言う届け出さえ出せば、誰でも始めることができる制度になってしまってます。
本来であれば保育園のように、ある一定の基準に基づいて、認可される仕組みでなくてはならないはずです。しかしそうした仕組みが存在せず、誰でもできるようにしてしまっている。これが問題の本質です。
まさに「異常事態」です…。
【再発を防止するために】
現在、野田聖子議員や田嶋要議員らが、臨時国会で審議予定の「特別養子縁組あっせん法案」ですが、残念ながらいまだに与野党間で調整がついていないようです。一刻も早く、与野党の建設的な話し合いが行われ、調整をつけ、法案審議をすることが、非常に重要です。そして許可制を実現することが、こうした事件の再発を防ぎます。
ぜひ国民の皆さんには、与野党の国会議員に法案の実現を呼びかけて頂けると、嬉しいです。
特別養子縁組は、予期しない妊娠をした実親を救い、子ども達を救い、子どもを育てたい養親たちの願いを叶える、素晴らしい制度です。そうした制度が、適切に世の中に広がっていくよう、関心を持って頂けることを、願っています。
最後に、日本こども縁組協会のリンクを貼りますね。
特別養子縁組の広がりを切に希望します…。
(エントリーとはまったく関係ない、むすめと私の写真。バッタかわいいよね)