sachi LOG

認定NPO法人D×P(ディーピー)で広報・マーケ・ファンドレイジングをやりつつ、オカン業もやっている入谷佐知の日々のログです。ブランド経営コンサルタントの師匠の元で修行したのち、現職。

くらしと共にある、未来型「働く」スペース。518桃李庵。

2012年3月に京都に来て、8か月が経とうとしています。7月より、シェアオフィスとして利用させていただいている烏丸今出川にある小さな長屋、518桃李庵(ごいちや とうりあん)。4か月間お世話になりながら、この桃李庵というスペースの面白さを実感しています。

【1】コラボレーションを生む、「りかちゃんハウス」型。
「りかちゃんハウス」とは、幼児向けのドールハウスの一種ですが、そのような家は、(現実世界ではありえないことに)家がまっぷたつになっていますよね。これにより、家の中の全体が見渡せるようになっています。

f:id:sachiiritani:20121108101344j:plain

こんな感じで。

桃李庵は、当然ながらまっぷたつになっているわけではないのですが、中に入るとこんなふうに、部屋全体が見渡せるようになっています。

 

f:id:sachiiritani:20121108160257j:plain

 

よって、どの部屋にいても、なんとなく、誰がどんな会話をしているか聞き耳をたてることができます。518桃李庵を運営されているNPO法人home's viさんいわく、
「会話が聞こえることによって関係性が生まれ、その場で、“それいいね!”、“それなら私こういう人知っているよ”、“一緒にそれやろう”というようなコラボレーションを生むことができる。そういうコラボを生む場にしたいと思っていた。りかちゃんハウス型のこの物件をみて、これしかないと思って、すぐ手続きをした」とのこと。

それを聞いた当初は、実のところ、「いやいやいや、いくらハードを整えたって、そんなうまくいくわけないやん!」と思いました。でも、実際のところ、home's viさんが想定したような会話は日常茶飯事で、現実として起こっています。それが、なぜなのかをもう少し考えてみました。

【2】絶妙なイントロデュース。―この場の意味、価値観の共有
home's viさんは、初めて桃李庵に訪れた人に対して、なるべく、イントロデュースをされています。例えば、先ほどのような、「りかちゃんハウス」の話をしたり、入居団体の話をするなかで、この桃李庵という場に何を期待していて、どういうことが起こってほしいと願っているのかを、ストーリーとして語ってくれます。それにより、【ここは、「桃李庵」という傘の下で、誰もが共通に、暮らし、仕事し、コラボレーションできるんだ】という価値観が、訪問者に共有されます。

なので、桃李庵というコンセプトの元に集う人たちに対して、排他性を起こさない。「初対面だけれど、桃李庵にいるということは、ファミリーだねー」というような暗黙の了解がなされ、初対面でも声がかけやすい状態にまで引っ張られます。これは、桃李庵の価値観・コンセプトの共有がきちんとなされているからなのだと、思います。

【3】常に、そこにいてくれる。―桃李庵の「管理人」さん。

よくあるシェアオフィス、シェアハウスと一線を画すのは、桃李庵の「寮父さん」ともいえる管理人のFさんの存在があることです。彼は、桃李庵の「管理人」として、桃李庵の場をととのえる役目を担います。久しぶりに訪れたときに、「おかえり」とゆるやかに笑うFさん。彼の存在があるからこそ、人の流動性高い桃李庵において、「軸」を得ることができます。安心して桃李庵にいる人がコラボできるのは、その裏に「変わらない」存在があることなのだと思います。

毎週金曜日夜に開催される「ごいちや食堂」。桃李庵の大家さんがごはんをつくり、それを皆で集まって食べるごはん会です。ワンコインでだれでも参加することができます。「食」とコラボすることが多いのも、桃李庵の特徴と感じます。「くらす」と「はたらく」が、当然のごとく、隣にある。


・・・と、ここまでざっくり書き上げてはみたものの、その中で行われていることは非常に有機的です。実際きちんとイントロデュースされているかといったらそうではない部分だってあるし、管理人さんが本当に常にいてくれるかと言ったら当然そうではない(そりゃあね)。桃李庵の理念がきちんと言葉になっているのかと言ったら、そうではない。けれど、様々な工夫や仕組みを日々実験・検証しながら、少しずつ桃李庵の価値観と理念が形作られ、同時にその価値観が場に染みわたって「桃李庵」という場を作り上げて行っているのだと思います。その意味では、冒頭に「利用している」と書きましたが、本来的には私個人は利用者ではなく、桃李庵の「作り手」のひとりだと思っています。

 

f:id:sachiiritani:20121108160327j:plain

まるで、こんもりとした森のように、日々有機的に変わる桃李庵。
いち入居者として、その面白みを感じている今日このごろです。

 

8,Novemver,2012
Sachi IRITANI
株式会社アム 京都ブランチ担当/NPOブランドマネジメント/NPOファンドレイジング(助成金獲得)/子育て長屋プロジェクト(仮)思案中/里親志望/2011年出産/2012年に神奈川から京都へ/空手とヨガ
twitter: @sachiiritani
facebook: sachi.iritani